『WEDGE』3月号

今月の特集は「介護、農業*1をバカにするな 雇用創出の嘘」。以前ちきりんさんがブログで書かれていた
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090106
の記事を取材に基づく実例で補強した感じ。「介護、農業の脆弱すぎる産業構造」に触れ、特に農業は「人手不足にもかかわらず正社員を受け入れられない」ほどのお寒い状況であると指摘。
さらに、介護は「様々な場面で専門的技能が要求される」ので、適性のある人間は限られる点も強調される。いわれてみれば人相手の高度な能力を要する仕事であるのは想像がつくし、だとすれば普遍的な失業者の受け皿としては機能しえないだろう*2
この記事と、前出のちきりんさんのエントリを読み合わせれば、雇用問題を自己責任論に落とし込むのはいかに愚かであるかがよく分かる。ただ、WEDGEの記事は誤読を招きかねない記述もあるので注意が必要だろう。たとえば現役介護士の言葉として「派遣の人は続かない」というのを取り上げているが、ここだけ切り取るとあたかも「派遣の人」が怠け者であるかのように思われかねない。でもこれは明らかに違う。その証拠に記事では「失業者個人の考え方や性格、習慣といった問題では片付けられない」と明記してあるではないか。読み飛ばしてはいけない。
もうひとつ。介護と農業がワーキングプアの受け皿になるとは限らないことがこの記事で主張されていることは重要であると思う。ただ、すべての人が「続かない」かといえば必ずしもそうとは言い切れない点。さらに介護と農業以外で「受け皿」としての役割を期待されているところ、例えば伝統工芸やモノづくりの現場については立証がまだなされていないので、こちらは受け皿として機能する可能性がまだある*3

*1:原文ママ。「、」の使い方が間違っている気がするが。名詞を列挙するときは「・」を使うのが正解と思う。

*2:選ばれた人のみ生き残りうるのは農業にも言えることで、とある農業法人の人は、とにかくハンパない体力がないとダメ、と言ってた。

*3:もちろんこれは、こちらに未来ラジオさんが推論をコメントしてくれたことがあるのだが、いかんせん実例がないので…こっちもWEDGEで取材してくれないかしら。