「格差突破力」とは何ぞや

「格差突破力」をつける方法―勉強法から人生戦略まで (新書y)

「格差突破力」をつける方法―勉強法から人生戦略まで (新書y)

最初、「下流」の人が這い上がるためのマニュアル本かと思って借りたのだけど、大きな勘違い。それに使える記述は無いわけじゃないけど、割合としては少ない。

でも、分量的には少ないけど、その主張は有益で、特に安易な「自分探し」*1に警鐘を鳴らす点は傾聴に値する。

普通の人間が、異能の人と同じ夢を同じやり方で追ったのでは、夢の実現どころか下流転落間違いなし(16頁)

プロスポーツや芸能やアートなどの世界で金銭的に大成功できるのは一握りの「異能の人」である。にもかかわらずこの国では、凡人までもがそれを目指さないといけないような空気が支配的。圧倒的多数の「普通の人」が普通に生きていくやり方を日本社会は軽視しすぎているというのだ。

だから、ニート・フリーターから脱却したいなら「夢や好き嫌いと適性を混同してはいけない(48頁)」。ビッグな夢はさておいて、とにかく、

契約社員でも派遣社員でもよいから企業にもぐりこんで、そこで努力して実績を上げ、人脈を築いて正社員を目指す(50頁)

のが肝要だと、著者は言う。「もぐりこむ」のに適当な分野は「ビジネス」「公務員」「(介護などの)癒し系」。これらは「才能の格差」が少ないので失敗しにくいし、努力が実を結びやすいというわけ。

はてな界隈であまりこの本に言及している人を見かけないのだが、見逃せない一冊かと。赤木智弘さんを意識したと思われる記述もあるが、それはまた稿を改めて。

*1:速水健朗『自分探しが止まらない』に出てくるような、パターン化されたものは見事に否定されているとみてよい。著者は海外に出ることを否定はしないけど、バックパッカーはちっとも奨励していない。