週刊エコノミスト6月19日号

特集は「娘、息子の悲惨な職場」。
まずは小林美希氏のルポ。正社員になっても低賃金長時間労働を強いられる団塊ジュニア世代の姿が泣かせる。しかもそんな過酷な条件の正社員ですらなれない就職氷河期世代の若者が多数いることを考えるとことはなおさら深刻。
「パラサイトで生活が成り立つ限り、それほど焦っているわけではない」とか相変わらずわけの分からない決め付けをしている山田昌弘氏はスルーして、熊野英生氏の記事*1

同一業界のいずれの企業も、限られた人数の氷河期世代しか能力開発をしてこなかったツケが、中堅層の人材不足につながっているのだ。

就職氷河期に新卒採用を手控えたせいで、経験を積んだ労働者がパイの奪い合いになっているという指摘。これはもっともだと思うのだが、結局そのツケは就職に失敗した就職氷河期世代に回されているのだから、国は強制力をもってでも企業にフリーターの正社員化を押し付けるべきだろう。
もちろん明るい材料にみえる現象もある。

中小企業のうち、特に製造業は、後継者不足に悩んでいる。(中略)技術者を養成したいと思っている中小企業ならば年長フリーターでも一人前に育ててくれる。

一見いいことのように思えるのだが、「製造業」とは平たく言えば町工場の類であろう。つまり就職氷河期世代が安定した職を得るには、中小の製造業以外にほとんど職業の選択肢がないということになる。年長フリーターというだけで職業選択の幅が大きく狭まれることは問題である*2
次のページでは一転していまの学生の就活事情がレポートされるのだが、フリーターとして働く上の世代をみて「自分はそうはなりたくない」と思った現役大学生の話が出てくる。当の上の世代からすればそういう感想持たれると正直イラッとくるのはあるが、それはともかく「新卒採用バブル」で入ってもすぐ辞める新卒無理やり採るより、団塊ジュニアからもっと採用してくれよと思う。
あとは安倍首相の再チャレンジ政策にたいする評価とか、海外の例とかが挙げられているのだが、その点で日本は明らかに遅れているし、政策の舵とりを大きく変えなければ当該世代は絶対に救われない、というのが確たる印象。

*1:熊野氏は一見フリーター暮らしに満足していると思える若者が実は「正社員の人々と対等に働きたい」と思っていると指摘していて、このほうがよっぽどわれわれフリーターの実感に沿っているといえる。

*2:もちろん、いわゆるモノづくりに適性のあるフリーターにとっては朗報である。が、世の中そんな人ばかりではないことは言うまでもない。実はぼく自身町工場にいたことがあるが、まったく合わなくて精神的に追い詰められ、従業員環視のなかで自傷行為をして辞めた経緯がある。