DoGA CGアニメコンテスト つづき

いきなりきのうのコンテストとは関係ない、別のセミナーの話をする。
以前「スキージャンプ・ペア」の真島理一郎さんなどが出ていたセミナーで、ぼくはこんな質問をしたことがある。
「影響を受けた映画やアニメ、漫画などはありますか?」
このとき壇上にいたCGクリエイターの方々はいずれも数々の賞を取った精鋭である。おそらく自分がかつて没頭した作品について熱く語ってくれるだろうと思っていた。


ところがどの方もそうではなくて、「特に無い」と即答する方もいた。ぼくはこの回答を聞いて、とても安心したのだ。
同じ質問を他の分野で名の知れた人にぶつければ、おそらく常人には出来ないほど濃密なサブカル体験を語ってくれる人が多いであろう。
たとえば「学生時代は月に何十本も映画を観た」「この長編漫画を何度も読み返し、セリフはすべて覚えた」といった類の、「自分はこんなにすごい努力をしたんですよ!」という、聞きようによっては自慢話にもなる種の話。


正直言ってこれは良くないと思う。特にクリエイターを志望する聴衆が大勢いるところでことさらそれを強調するのはまずいんじゃないかと思う。
どういうことかというと、「十代や学生時代のうちにものすごい努力をしてきた人が、いま偉大なクリエイターになっている」という事実が、「ひょっとしてそういうすごい努力をしてきた人でないと偉大なクリエイターにはなれないんだな」もしくは「俺そういう努力しないで大人になっちゃったから、もう手遅れじゃん」と歪曲して伝わる可能性があるのだ。


ここでようやく、きのうのCGAコンテストの座談会の話である。
壇上に上がった受賞者の方々を見ると、やはり真島さんたちと同じように気さくで自慢ぶったところが無い。これがものすごく好印象だった。
おそらくきのう会場にいたクリエイター志望の人たちの中にも「青春時代を怠惰に過ごした俺でも、後付けで努力すればなんとか間に合う」と思った人はいるだろうし、実際「後付けの努力」で何とかなる世界でもあるのだ。