『ラブリー百科事典 〜極東フェアリーテイルズ〜』(2)

岡野史佳の漫画って、昔はこんなに萌えただろうか?

別に昔の岡野作品が萌えないと言いたいのではない。これほどまでに萌え要素を強調しながら、岡野史佳独自の作家性を失わないでいる、そのことに驚嘆しているのだ。

「ラブリー〜」は以前少女漫画誌(『ララ』)に連載されていた頃よりも、萌えのツボをピンポイントで突いてくる。ストーリーも登場人物もそのときの設定を踏襲してはいるが、萌え方向にマイナーチェンジが施されている。

典型的ケモノ耳キャラのおキツネさま。かすみちゃんはシスプリの千影の和風バージョンと言えようか。日本古来の呪術が持つ土着的オドロオドロしさに違和感がないままに暴力的な萌えをまき散らしている。対極にあるのがチルル。ケルト神話にインスパイアされて生まれた(たぶん)エルフ耳魔女が悪女ぶりを発揮しつつも言いようのないかわいらしさを見せている。

同時収録の短編「さくらびより」も秀逸。アイカの帰国子女という設定は一見ありがちだが、To Heart宮内レミィのような話し方はしない。あれはあれでアリなのだが、実際ああいうしゃべり方する人はそういないだろ。逆にアイカのそれにはリアリティを感じる。

それより何よりエプロンがすごい。岡野さんは元々「ひらひら」が好きな人だったが、ここまで破壊力のある「ひらひら」は久しぶりに見た。