この日の日記のつづきなのです。

ビッグイシュー日本版 60号』に、こんなコラムがあった。先日高円寺で行われたデモについて書かれたものだが、言っていることはさまざまな場面に当てはまる。

今、日本では暴力が極限まで抑えこまれ、それが自分に向かっている。リストカットや自殺、ネットでの不毛な誹謗・中傷合戦は、行き場のない怒りの悲しい暴発だ*1
雨宮処凛「世界の当事者になる−家賃をタダにしろ一揆」)

確かにそうだ。上に挙げられたような形での暴発を防ぐためにも、正しく怒ることは時に必要だ。それは大々的なデモンストレーションでなくてもかまわないと思う。日常のなかで、適切なタイミングで怒ることがときには必要となる。


この国には「我慢は美徳」裏を返せば「怒りや不満の感情を表に出すのは恥」という文化がある。確かにみっともない怒り方や怒る相手を間違えている困ったちゃんも大勢いるから*2、それも一理あるのかもしれない。
でも、正しい場面を選択すれば、怒ることは決してみっともなくなんかない。怒りと鋏は使いようってことだ*3



もっとも、怒りの言葉なんて咄嗟に出てくるものじゃないから、イザというとき用のセリフを予め準備しておくほうがいい。
それをアタマにインプットするには、出来るだけシンプルなほうがいい。
シンプルでいて、インパクトも強いほうがいい。
そうやって作った言葉を、毎朝声に出して本番に備える。
ファミレスの店員が毎日いらっしゃいませを復唱するように。
小学生が朝の会で今週の標語を復唱するように。


遥洋子『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』(ちくま文庫)に、「ケンカのしかた・十箇条」という章がある。学界で、マスメディアで、凛々しく論戦を繰り広げる上野千鶴子のもとで学んだ経験を基に、タレント遥洋子がまとめたものだ。

  1. 守るための開き直り
  2. 守るための質問<わからない>編
  3. 守るための質問<○○って何?>編
  4. 攻撃の為の質問<そのまんま>編
  5. 広い知識をもつ
  6. ワクを超えた発想をもつ
  7. 言葉に敏感になる
  8. 間をあけない
  9. 声を荒げない
  10. 勉強する

ブロック分けされて説明された10の戦術は、日常の場面でも通じるだろう。この本を買って戦略を練るのがベストだとは思うが、とりあえず上記を踏まえて「怒るときの定番セリフ集」を作ってみる。

  1. それの何が悪いんですか?
  2. 言ってることの意味が分かりません。
  3. ○○って何ですか?
  4. あなたはどうなんですか?
  5. なぜですか? どうしてですか?
  6. 嫌です。

最後の二つは前掲書を直接反映したものではないが、質問と拒否がケンカに有効であることが読み取れたので追加しておく。
これらのセリフを毎日暗誦し、本番では相手の言葉に敏感に反応しつつ、間を空けず、声を荒げずにこれらの言葉を投げかける。
そして、日頃から知識に対して貪欲になること。これがじつはいちばん重要かもしれない。


東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ (ちくま文庫)

東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ (ちくま文庫)

*1:学校でのいじめも「行き場のない怒りの悲しい暴発」だと思う。自分が属する集団の中の弱者に向かう内向きの暴力だからだ。

*2:たとえばサポセンにわけわかめなクレーム付ける人とか。

*3:ちなみにぼくのキレていい基準は「自分より弱い立場の人に矛先が向いていない」「自分がキレることで自分以外の人間が得をする」といったところ。つまり、誰かを困らせるベクトルではなく、自分と他の誰かを守るための怒りを持とう、ってこと。